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東京地方裁判所 昭和59年(ワ)2426号 判決

原告

勝澤みほ子

ほか二名

被告

鍋谷宏

ほか四名

主文

一  被告らは、各自、原告勝澤みほ子に対し金一七九万二九三一円、原告勝澤幸子、同久美子に対し各金八八万一四六五円、及び右各金員に対する昭和五八年四月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その二を原告らの、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は主文第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは各自、原告勝澤みほ子に対し金一一七九万三六七四円、同勝澤幸子、同勝澤久美子に対し各金五六九万六八三七円、及び右各金員に対する昭和五八年四月二三日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 日時 昭和五八年四月二二日午後一一時四五分ころ

(二) 場所 東京都板橋区中丸町五二番地先路上

(三) 加害車両 自動二輪車(第一練馬こ八六五二号)

右運転者 被告鍋谷伸(以下「被告伸」という。)

(四) 事故態様 前記事故現場道路を横断中の亡勝澤浩(以下「亡浩」という。)が加害車両に衝突され、胸腹腔内臓器損傷の傷害を受けて同日死亡した(以下「本件事故」という。)。

2  責任原因

(一) 被告金山篤(以下「被告金山」という。)は加害車両の所有者であり、被告奥村賢治(以下「被告奥村」という。)は加害車両を被告金山から借り受けていた者で、被告伸は右奥村から更に加害車両を借り受けていた者で、いずれも同車両を自己の運行の用に供していたものであるから、右被告らはそれぞれ自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条の規定に基づき、また、本件事故は加害車両の運転者被告伸の速度違反及び前方不注視の過失により発生したものであるから同被告は民法七〇九条の規定に基づき、原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(二) 被告鍋谷宏、同鍋谷イク子の責任

(1) 被告鍋谷宏(以下「被告宏」という。)は被告伸の父、被告鍋谷イク子(以下「被告イク子」という。)は被告伸の母であり、いずれも本件事故当時未成年者である被告伸の親権者として同被告が第三者に対し不法行為をすることのないよう監視監督すべき義務を負つている者であるが、被告伸が昭和五六年三月自動二輪車の運転免許を取得することを許容し、かつその頃同被告が遊び目的で使用するため容量四〇〇ccの自動二輪車を購入するについても購入資金及び維持管理費を負担し保管場所も提供していた。ところで被告伸は昭和五六年五月八日から昭和五八年四月二日までの間計五回にわたり自動二輪車を運転して道路交通法違反を犯し、反則金を二回支払つているほか少年保護事件として家庭裁判所からも厳重な注意を受けていたが、被告宏及び同イク子は右事実を熟知しながら被告伸に対し特段の注意ないし監視をすることなく放置し、このため本件事故に至つたものであるから、被告宏及び同イク子は前記監視監督義務を怠つた過失があり、右過失と友人から借用した加害車両を運転中の本件事故との間には因果関係があるといえるから、同被告らは民法七〇九条の規定に基づき原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(2) また右事実からすると、被告宏、同イク子は被告伸が自己所有以外の自動二輪車を運転することを予測しかつ許容していたものであるから加害車両を自己のため運行の用に供していた者として自賠法三条の規定に基づき原告らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。

(3) 被告宏は、昭和五八年四月二三日ころ原告らに対し、被告伸が本件事故により原告らに対し負担する損害賠償債務につき、同被告の保証人として連帯して右債務の支払をする旨を約した。

3  損害

(一) 逸失利益 金四六五七万四六九八円

亡浩は事故当時四六歳の男子で日本電信電話公社職員として稼働し、年額金四七一万七五四三円の所得を得ており、本件事故により死亡しなければ六七歳までの二一年間稼働可能で、その間少なくとも右と同額の所得を得られた筈であるから、扶養家族構成(妻及び事故当時八歳女子と三歳女子)に照らして生活費三割を控除し、ライプニツツ式計算法により年五分の割合の中間利息を控除し、亡浩の逸失利益の現価を求めると、次の計算式のとおり、金四六五七万四六九八円(一円未満切り捨て)となる。

計算式 4,717,543×(1-0.3)×14.1038=46,574,698

(二) 慰藉料 金二〇〇〇万円

亡浩は本件事故により死亡したのであり、甚大な精神的苦痛を被つたから、これを慰藉するための慰藉料としては金二〇〇〇万円が相当である。

(三) 原告勝澤みほ子(以下「原告みほ子」という。)は亡浩の妻、原告勝澤幸子(以下「原告幸子」という。)及び原告勝澤久美子(以下「原告久美子」という。)はいずれも亡浩の子であつて他に亡浩の相続人は存しないから、亡浩の死亡により原告らは法定相続分(原告みほ子は二分の一、他の原告らは各四分の一)の割合で、前記(一)及び(二)の損害賠償請求権を相続取得した。これによれば、原告みほ子の損害額は金三三二八万七三四九円、他の原告らの損害額は各金一六六四万三六七四円となる。

(四) 葬儀費用 金八〇万円

亡浩の葬儀費用として金一六三万八〇〇〇円を要し、原告勝澤みほ子(以下「原告みほ子」という。)がこれを負担のうえ支出したが、その内金八〇万円を請求する。

(五) 損害のてん補

原告らは、加害車両の加入する自賠責保険から、損害のてん補として、原告みほ子は金一〇〇〇万円、その余の原告らは各金五〇〇万円、合計金二〇〇〇万円の支払を受けた。

(六) 前記(一)ないし(四)の合計額から(五)のてん補額を控除すると、残額は原告みほ子が金二四〇八万七三四九円、その余の原告らが各金一一六四万三六七四円となる。

(七) 弁護士費用

被告らが損害額の任意支払に応じないため原告らは原告ら訴訟代理人に本訴の提起追行を委任することを余儀なくされたが、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告みほ子が金二〇〇万円、その余の原告らが各金一〇〇万円とするのが相当である。

(八) 右(六)と(七)の金額を合計すると、原告らの損害額は原告みほ子が金二六〇八万七三四九円、その余の原告らが各金一二六四万三六七四円となる。

4  そこで、原告らは被告らに対し、右損害額の内金として、各自原告みほ子は金一一七九万三六七四円、その余の原告らは各金五六九万六八三七円、及び右各金員に対する本件事故発生日の翌日である昭和五八年四月二三日から各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2(一)の事実は認め、同2(二)の(1)の事実中、被告宏、同イク子が本件事故当時未成年(一八歳)であつた被告伸の父母であり親権者であつたこと、被告伸が自動二輪車の運転免許を取得し自動二輪車を購入したこと、原告ら主張のとおり自動二輪車を運転して道路交通法違反を犯し反則金を二回支払つたこと、被告伸が家庭裁判所に出頭したことがあることは認め、その余は争う。同2(二)の(2)の事実は争う。同2(二)の(3)の事実は否認する。

3  同3(一)の事実中、亡浩の身分、地位、職業、収入、家族関係は不知、その余は争う。生活費控除は四〇パーセントが相当である。同3(二)は争う。亡浩の慰藉料としては金一八〇〇万円が相当である。同3(三)の事実中相続関係は不知、損害賠償額は争う。同3(四)の事実中、内金の請求は争う。本件事故と因果関係のある葬儀費用としては金八〇万円が相当である。同3(五)の事実中、自賠責保険から原告らに対し合計金二〇〇〇万円が支払われたことは認め、その余は不知。同3(七)の事実中、原告らが本訴の提起追行を原告ら訴訟代理人に委任したことは認め、その余は争う。

三  抗弁

1  過失相殺

(一) 本件事故は、被告伸が加害車両を時速八〇キロメートル(制限速度毎時五〇キロメートル)で進行し、事故現場の信号機により交通整理のされた交差点にさしかかり、対面信号が青を表示していたためそのまま進行したところ、右交差点の横断歩道を泥酔のうえ対面信号が赤であるのにこれを無視して小走りに右から左に横断してきた亡浩を約七・八メートル前方に発見し、急制動の措置をとるも間に合わず衝突したものである。

(二) したがつて被告伸には、前方不注視及び制限速度超過の過失があるが、他方亡浩にも泥酔のうえ赤信号を無視して左右の安全も確認せず小走りに本件交差点を横断しようとした重大な過失があり、亡浩の過失相殺率を八割とするのが相当である。

2  被告宏は原告みほ子に対し、香典として金三〇万円、初七日香料として金一万円を支払つた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  同2の事実は不知。

第三証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録各記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  請求原因1(事故の発生)、同2の(一)(被告金山、同奥村、同伸の責任原因)の各事実は当事者間に争いがない。

二  被告宏及び同イク子の責任について判断する。

1  請求原因2(二)の(1)の事実中、被告宏、同イク子が本件事故当時未成年であつた被告伸の父母であり親権者であつたこと、被告伸が自動二輪車の運転免許を取得し自動二輪車を購入したこと、原告ら主張のとおり自動二輪車を運転して道路交通法違反を犯し反則金を二回支払つたこと、被告伸が家庭裁判所に出頭したことがあることは当事者間に争いがない。

2  右争いのない事実に成立に争いのない甲第一号証、乙第一号証、被告鍋谷宏、同鍋谷イク子各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、

(一)  被告伸は、本件事故当時一八歳の予備校学生で板橋区内のマンシヨンに母被告イク子及び姉弟と居住し、同所から予備校に通学していた。なお父被告宏は会社員で姫路市に転勤し、いわゆる単身赴任中であつた。

(二)  被告伸がかつて在籍していた高校では自動二輪の免許取得及び運転を禁止していたが、同被告は被告宏及びイク子に対して右免許取得の希望を強く訴えたため、当初反対していた被告イク子は被告宏に隠れてこれを許し教習所の費用を負担した。被告伸は右高校在学中の昭和五六年三月右免許を取得し、後日右事実を知つた被告宏は強く反対して被告伸を叱つたものの結局はペーパードライバーに止まることを条件にこれを容認した。

(三)  その後、被告伸は被告イク子に対し受験勉強の合い間に気分転換をしたいとの理由で自動二輪車を購入したい旨懇願したため、同被告において前同様被告宏に隠れて昭和五六年五月ころ自動二輪車(四〇〇cc)を被告伸に買い与えた。なお購入資金のほとんどは結局被告宏の給与等がこれに充てられた。被告宏は後日右購入の事実を知らされた結果、これを認め、被告伸らに対し安全運転をするよう口頭で注意したが、それ以上の指示をすることはなかつた。なお、右車両には自賠責保険が付保されているのみで、任意保険に加入していなかつた。

(四)  被告伸は、右購入直後ころ右自動二輪車を運転して制限速度違反(三〇キロ超過)で検挙され、少年保護事件の審判を受けるため被告イク子と共に家庭裁判所にも出頭したが、更に昭和五七年四月二日(信号無視)、同年七月一三日(制動装置不良)、同年七月三〇日(指定場所一時停止違反)、昭和五八年四月二日(制動装置違反)と各道路交通法違反を犯しており、その間反則金を納付(被告イク子の援助で)し、免許停止の行政処分も受けていた。被告イク子は、右のように被告伸に道路交通法違反歴が多く、その内容も事故発生の危険性を伴つているものであるにもかかわらず、口頭による注意以上の特段の監視措置をとることなく、被告伸において学校から帰宅後、夜間も、自動二輪車を自由に使用してもこれを放置し、また右違反事実を夫である被告宏に告げてその善処方を相談する等の措置をとることもなく、却つて被告宏にこれを秘していた。また被告宏は、前記のとおり単身赴任中で自動二輪車購入当初に被告伸に対して安全運転をするよう注意したのみで、被告イク子から何ら相談を受けていないこともあつて、被告伸が右の指示を遵守しているか否か等について注意を払うことなく放置していた。

(五)  本件事故は、被告伸が高校卒業後大学受験のため勉学中の時期において、深夜、被告伸所有の右自動二輪車を被告奥村が、被告金山所有の加害車両を被告伸が、それぞれ運転し、加害車両が先頭に立つて進行中、後記認定のとおり、被告伸の制限速度違反、前方不注視の過失によつて発生した。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  右の事実を前提に検討すると、被告宏及び同イク子には、当時高校生更に予備校学生であつた息子被告伸が自動二輪車を運転するにつき、右運転により交通事故を惹起することのないよう十分監視監護すべき注意義務があるのにこれを怠つた過失があり、右過失と本件事故発生との間には因果関係があると認めるのが相当であり、被告宏及び被告イク子は民法七〇九条の規定に基づき原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

三  損害

1  逸失利益 金三九三一万四六五八円

成立に争いのない甲第三、第四号証及び原告勝澤みほ子本人尋問の結果によれば、亡浩は本件事故当時四六歳の健康な男子で日本電信電話公社職員として稼働し年額金四七一万七五四三円の所得を得ていたこと、家族は亡浩のほか妻原告みほ子(昭和一五年四月五日生)、長女原告幸子(昭和五〇年八月一日生)及び二女原告久美子(昭和五三年八月二四日生)の三名であることが認められ(右認定に反する証拠はない。)、亡浩は本件事故により死亡しなければ六七歳までの二一年間稼働可能でその間少なくとも右と同額の所得を得られた筈であるから、これを基礎に、前記家族構成その他諸般の事情を考慮して生活費として三割五分を控除し、ライプニツツ式計算法により年五分の中間利息を控除して、亡浩の死亡時における逸失利益の現価を算定すると、次の計算式のとおり、金三九三一万四六五八円(一円未満切り捨て)となる。

計算式 4,717,543×(1-0.35)×12.8211=39,314,658

2  慰藉料 金一八〇〇万円

亡浩は本件事故により死亡したもので、同人の年齢・前記家族構成その他諸般の事情に鑑みると、亡浩の精神的苦痛を慰藉するための慰藉料としては、金一八〇〇万円が相当と認める。

3  原告らの権利の承継

原告らの身分関係は前記1に認定したとおりで他に亡浩の相続人は存しないから、亡浩の死亡により原告らは法定相続分(原告みほ子は二分の一、その余の原告らは各四分の一)の割合で前記1及び2の損害賠償請求権を相続取得した。これによると、原告みほ子の損害額は金二八六五万七三二九円、その余の原告の損害額は各金一四三二万八六六四円(一円未満切り捨て)となる。

4  葬儀費用 金八〇万円

原告勝澤みほ子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、亡浩の葬儀費用として金八〇万円以上を要し、原告みほ子がこれを負担のうえ支出したことが認められ(右認定を左右するに足りる証拠はない。)、本件事故と相当因果関係のある葬儀費用は金八〇万円が相当と認める。そうすると原告みほ子の損害額は合計金二九四五万七三二九円となる。

5  過失相殺

前記乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、

(一)  本件事故現場は、別紙図面のとおりで、池袋方面から成増方面に通じる車道幅員約一七・二メートル、片側二車線で、幅員約一・四メートルの中央分離帯により上下線が区分され、車道両側に幅員約四メートルの歩道が設置されたアスフアルト舗装の平坦な直線道路(以下「本件道路」という。)と、大山駅(北)方面から南町(南)方面に通じる直線道路及び山手通り(東)方面から幸町(西)方面に通じる直線道路が交差する交差点で、右交差点内の本件道路上に幅員約四・一メートルの横断歩道があり、信号機により交通整理が行われている。本件道路は、障害物はなく前方の見とおし状況は良好であり、道路両側には店舗・住宅等が密集しており、街路灯があつて夜間でも明るい場所である、最高速度は毎時五〇キロメートル以下に規制されている。なお、事故当時路面は乾燥していた。

(二)  被告伸は本件道路の中央線寄りの車線上を加害車両を運転して時速約六〇キロメートルで池袋方面から成増方面に向けて進行中、前記横断歩道の手前約五六・九メートルの地点で対面の信号機が赤色を表示しているのを認めて若干減速したが、約二五メートル進行した地点で青色に変つたため加速して時速約八〇キロメートルで進行したところ、前方注視を怠つたため前方の横断歩道上を右から左に横断中の亡浩を約七・八メートル先に初めて発見し、直ちに急制動の措置をとつたがブレーキがきく間もなく同人に衝突した。

(三)  亡浩は、飲酒のうえ血液一ミリリツトル中に約二・〇六ミリグラムのアルコールを保有した状態で、本件道路の横断歩道北東端にさしかかり、横断歩行者用の信号表示が赤色か青色点滅から赤色に変る直前ころ、左右の安全を確認することもなく小走りに横断を開始し、約一一・四五メートル進んだ地点で前記のとおり加害車両と衝突した。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。右の事実によれば、被告伸には本件事故発生について速度違反及び前方不注視の過失があり、他方亡浩にも酔余、同人に有利に考えても横断を開始した直後ころには歩行者用信号が赤色に変つているにもかかわらず、引き返すことなく、また左右の安全を確認することなく、そのまま小走りに横断を続けた不注意があるから、原告の損害額から六割の過失相殺をするのが相当である。そうすると、原告みほ子の損害額は金一一七八万二九三一円(一円未満切り捨て)、その余の原告らの損害額は各金五七三万一四六五円(同上)となる。

6  損害のてん補

(一)  原告らが加害車両の加入する自賠責保険から損害のてん補として、原告みほ子が金一〇〇〇万円、その余の原告らが各金五〇〇万円の支払を受けたことは、原告らの自認するところである。

(二)  原告勝澤みほ子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、抗弁2(香典金三〇万円及び初七日香料金一万円の合計金三一万円の原告みほ子に対する支払)の事実が認められる(右認定に反する証拠はない。)。ところで、右のうち本来の意味での香典及び初七日香料(本件ではこれを各金一万円、合計金二万円と認めるのが相当である。)は儀礼上の出捐であつて損害のてん補として支払われたものでないと解するのが相当であるから、右の金額のうち金二九万円が損害のてん補として控除の対象となる。

(三)  前記5の金額からてん補額を控除すると、残額は原告みほ子が金一四九万二九三一円、その余の原告らが各金七三万一四六五円となる。

7  弁護士費用

本件訴訟の難易、審理経過、認容額等諸般の事情を考慮すると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては、原告みほ子につき金三〇万円、その余の原告らにつき各金一五万円が相当である。

8  結論

以上によれば、原告らの損害額は、原告みほ子が金一七九万二九三一円、その余の原告らが各金八八万一四六五円となる。

四  よつて、原告らの被告らに対する本訴請求は、各自原告みほ子に対し金一七九万二九三一円、その余の原告らに対し各金八八万一四六五円及び右各金員に対する本件事故発生の日の翌日である昭和五八年四月二三日から各支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 松本久)

別紙図面

〈省略〉

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